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【遺留分侵害額請求権とは?】旧制度との違いや時効を止める方法、遺留分侵害額請求で注意する点について

相続でお金が入ることを当てにしていたら、遺言書があった、生前に贈与されていたため自分の相続分が全くなかった、あるいはほんの少ししか相続できなかった。
このような経験をしたことがあることもいらっしゃると思います。
今回は、このような問題が発生したときに行使できる「遺留分侵害請求権」について解説していきます。

1 遺留分とは

遺留分とは、相続できる財産の最低保障額で、兄弟姉妹以外の相続人に認められています。
遺留分の目的は、相続人の相続に対する期待を一定程度保護することにあります。
被相続人は、遺言や生前贈与により自由に自分の財産を処分することが可能です。相続人によって、多く財産を与えたり、全く財産を与えないことができます。
しかし、これは一方で、遺産を相続できると期待していた相続人が、蓋を開けると遺産を相続できなかったということを意味します。これでは、相続人の人生設計が狂ってしまいかねません。
そこで、民法は、亡くなった人の生前の意思と相続に対する期待のバランスを図り、兄弟姉妹を除く相続人に対して、最低限の遺産を受け取ることができると定めたのです。

なお、遺留分に関しては、当事務所の以下のコラムもご参照ください。

遺留分制度の改正

2 遺留分の割合

兄弟姉妹を除く各相続人に保障されている遺留分の割合は以下のとおりです。

ア 父母のみが相続人の場合 遺産の3分の1
イ ア以外の場合      遺産の2分の1

アイとも該当する相続人が複数いる場合には、さらに法定相続分に基づいて割合が決められることとなります。
例えば、配偶者と子ふたりが相続人だった場合には、以下のとおりとなります。

配偶者 2分の1(遺留分)×2分の1(法定相続分)=4分の1
子ども 2分の1(遺留分)×2分の1(法定相続分)×2分の1(頭割り分)=8分の1

3 遺留分の法改正

2020年4月施行の民法改正で、遺留分に関する改正がなされました。本項では、この点について解説します。

3-1 遺留分減殺請求(旧制度)について

旧民法では、「遺留分減殺請求」という制度が設けられていました。
これは、遺留分を下回る額の遺産しか取得できなかった相続人が、遺産を多く受け取った人に対して、侵害されている遺留分について自分に配分するよう求めることができる権利です。
この制度は、2020年4月施行の民法改正により、「遺留分侵害額請求」という制度に改姓されました。
次項では、この「遺留分侵害額請求」について解説します。

3-2 新制度「遺留分侵害額請求」について

現在の制度である「遺留分侵害額請求」はどのような制度でしょうか。
旧制度との違いや請求の手続きについて解説します。

3-2-1 改正の背景

改正の背景事情は以下の2つです。

ア 共有関係の発生を防ぐ

旧制度の遺留分減殺請求は、権利行使によって相続財産の共有関係が生じ、トラブルの原因になりやすいと指摘されていました。
後述しますが、遺留分減殺請求は財産の取戻しを内容とするものであるため、不動産についてこれが行われると請求した相続人とされた相続人の共有関係が生まれるのです。
共有物を処分するには、共有者全員の同意が必要ですし、賃貸などの管理を行う場合にも過半数の同意を得ることが必要です。
そのため、不動産の処分や管理を容易にすることができず、事業に支障が生じるという問題が発生していました。

イ 被相続人の意思を尊重する

アでも記載したとおり、遺留分減殺請求権では、特定の財産について被相続人の意思に反して共有関係になるなどの問題が生じており、被相続人の意思が十分に反映されないという問題がありました。
そこで、このような問題を解消するために新制度に移行することとなりました。

3-2-2 旧制度との違い

新制度の遺留分侵害額請求と旧制度の遺留分減殺請求権は、以下の点で違いがあります。

ア 財産の取戻しか、金銭の支払いを受けるか

旧制度の遺留分減殺請求権は、遺留分を侵害された場合に、財産自体を取り戻しを請求するのでした。
しかし、新制度の遺留分侵害額請求では、遺留分額と実際に相続した差額について金銭で支払うよう請求することとなります。
例えば、被相続人が遺産として相続時の時価8000万円の土地と預貯金2000万円を残し、相続人である子ふたりのうちAに対しては土地を、Bに対しては預貯金を相続させるという遺言を残したとします。
この場合、遺留分は、1億円(8000万円+2000万円)×2分の1×2分の1=2500万円となり、Bの遺留分は500万円分侵害されていることとなります。
そうすると、旧制度の遺留分減殺請求では、Bは不動産のうち500万円分(=16分の1)の共有持分を取得することとなります。
これに対し、新制度の遺留分侵害額請求では、AがBに対して、差額の500万円を支払うこととなり、不動産については、Aは単独の所有権を取得することとなります。

イ 遺留分の基礎となる生前贈与の範囲の違い

生前贈与に関する取り扱いにも変更がありました。
旧制度の遺留分減殺請求では、遺留分額の計算に当たって、相続人が受けた生前贈与は時期に関わらず全て基礎に含まれることとなっていました。
これに対して新制度の遺留分侵害額請求では、相続人が受けた生前贈与は、相続開始前10年間に受けたもののみが、遺留分額の計算の基礎に含まれることとなりました。

3-2-3 遺留分侵害額請求の手続

まず注意しなければならないのは、新制度の遺留分額侵害請求の対象となるのは、2019年7月1日以降に発生した相続となります。
手続は以下のとおりです。

ア 遺留分侵害額の計算

以下の計算式を用います。

遺留分額=基礎財産額×遺留分割合
遺留分侵害額=遺留分額-実際に取得した基礎財産額

イ 請求の相手方の特定

請求の相手方は、各自の遺留分額を上回る基礎財産を取得した受遺者又は受贈者となります。

ウ 請求書の送付

内容証明郵便などを用いて、相手方に請求書を送付します。返答がある場合には、支払額や支払い方法などについて協議し、合意できれば合意書を作成して精算を行います。

エ 調停申し立て

協議により解決できなかった場合には、家庭裁判所に対して遺留分侵害額請求の調停を申し立て、調停委員を介しての話し合いで解決を図ることとなります。

オ 訴訟提起

調停で合意できず、調停不成立となった場合には、請求者の住所を管轄する地方裁判所(請求額が140万円以上の場合)または簡易裁判所(請求額が140万円を下回る場合)に、遺留分侵害額請求訴訟を提起することとなります。
訴訟の段階に至った場合でも、手続の中で話し合いができれば、訴訟上の和解が成立することとなります。
合意できなかった場合には、判決を下してもらうこととなります。

4 遺留分侵害額請求には時効がある(起算点の話も)

遺留分侵害額請求は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈を知ったときから1年で消滅時効が完成し、以後、権利行使することができなくなります。
注意していただきたいのは、時効期間が1年間と極めて短いということです。
時効期間が短く定められているのは、相続財産に関する権利関係を早期に確定することを目的としています。
ただ、相続開始の時点からではなく、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈を「知ったとき」から1年であるので、相続開始は知っていたとしても、例えば遺言書が見つからずに1年を経過してしまったような場合に、既に消滅時効が完成しているというわけではありません。
いずれにせよ、時効期間が非常に短いため、遺留分が侵害されていることが判明した場合には、早急に内容証明を送付する、調停を申し立てるなどに対応が必要です。

5 遺留分侵害額請求で注意する点

5-1 遺留分が侵害されていることがわかったら早急に対応すること

先ほども述べたように遺留分侵害請求権の消滅時効は1年と非常に短く設定されています。
事態を放置すると、本来取得できるはずの権利を取得できなくなるので、遺留分が侵害されていることを知った場合には、すぐに弁護士に相談するなど対応を始めるようにしましょう。

5-2 不動産の査定をすること

遺産に不動産が含まれている場合には、不動産の評価次第で遺留分がどの程度侵害されているかが明らかになります。
そのため、遺産に不動産が含まれている場合には、簡易的なもので良いので、早急に不動産の査定を行うようにしましょう。
業者によって評価に差が出ることもあるので、複数の査定を採ることが望ましいです。

6 早めに弁護士に相談

何度も書いているように遺留分侵害額請求権を行使できる期間は非常に短く、その上、場合によっては不動産の査定をとらなければならないなど、請求に当たって準備しなければならないことも少なくありません。
相続が開始し、自身の遺留分が侵害されていることを知ったあるいは侵害されている疑いがあるという場合には、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、調査の上、内容証明を送る、調停を申し立てるなどの必要な対応を迅速にしてもらうことができます。
当事務所は遺留分の問題の相談も受けており、ご依頼があれば、必要な調査をしたうえで、迅速に対応いたします。
遺留分の問題でお困りの方は、是非お気軽に当事務所にご相談ください。

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