連絡が取れない相続人がいるときの相続手続き
相続人の中に、連絡が取れない人がいる場合にどのように相続手続きを進めていけばよいのでしょうか。この記事では、連絡が取れない相続人がいるときの相続手続きについてお伝えします。
1 相続人と連絡がとれないまま、相続(遺産分割)手続きを進めた場合
被相続人に遺産(預貯金、不動産、株式、車両など)がある場合、遺産分割手続きをする必要がありますが、遺産分割手続きは法定相続人が全員で遺産分割協議をする必要があります。遺言で全ての遺産について遺産分割の方法の指定がされている場合には遺産分割協議は不要ですが、そのような遺言がない場合には、遺産分割協議をする必要があります。そのため、連絡がとれない相続人がいる場合に、その人を除いて遺産分割協議をすることはできず、仮にその人を外したまま遺産分割協議をしても、それは無効になります。遺産分割協議が無効であれば、当然、相続手続きを進めることができません。たとえば、不動産や車、株式などの相続財産の名義変更や預貯金の払い戻しなど、対外的な相続手続きは一切、進められないことになります。
2 相続人の行方が分からない場合の相続手続きの進め方
相続人の行方ががわからず連絡が取れない場合には、以下の通り相続手続きを進めていくことになります。
(1)役所で書類(戸籍、戸籍の附票)をとって住所地を調べる
まず亡くなった方の戸籍をとります。その戸籍から、現在の相続人の戸籍まで追っていき、その相続人の戸籍の附票をとります。戸籍の附票には、現在の住民票上の住所地が記載されています。もし、この手続きが分からないとう方は、弁護士や司法書士等の専門家に取得を依頼するということもできます。
住所地が分かれば、その住所に協議のための文書を出す等の方法で、話を進めていくことが出来ます。
(2)不在者財産管理人を選任してもらう
戸籍の附票上の住所は、住民票上の住所ですが、引っ越しても住民票を移していないような場合もあり、そこに確実に居住しているとは限りません。
そのような場合で、他のご親族をつたっても相続人の連絡先の情報が得られない場合があります。その場合は、「不在者」として手続きを進めることになります。
具体的には、その相続人の代わりに、財産を管理する人である不在者の財産管理人を裁判所に選任してもらって、その人との間で遺産分割協議を進めていくことになります。
不在者財産管理人には、裁判所が選任しますが、弁護士等の専門家がなることが多いです。
(3)失踪宣告をする
行方不明の期間が長期にわたり、生死不明の状況が7年以上経過している場合には、不在者財産管理人の選任以外に執行宣告という制度が利用可能です。
失踪宣告とは、行方不明の人について法律上「死亡した」とみなす効果を生じさせるもので裁判所に申立をする必要があります。
失踪宣告がされると、その相続人は「死亡した」とみなされるため、その相続人の相続人(子供達等)との間で遺産分割協議をすることになります。
3 ある相続人の生死や行方が分かっているのに、無視されている場合の相続手続きの進め方
(1)こちらの連絡が無視される典型的なケース
こちらの連絡を無視する相続人がいる場合、典型的なケースは以下のようなケースが多いです。
- もともと疎遠で、対応が面倒
- もともと親族間で感情的な対立があり連絡をとりたくない
- 相手が相続放棄のつもりでいる
(2)こちらの連絡を無視した場合の不利益の説明
こちらの連絡を無視する相続人がいる場合、無視した場合の不利益や問題があるのかを正確に伝えて、理解してもらうことが大事になります。たとえば、遺産分割協議が成立しなければ家庭裁判所で遺産分割調停になってしまうこと、いつかは相続手続きをしなければならず、しないままだと次世代に問題が引き継がれてしまうことなどの説明を行うことが肝要になります。このようにすれば、相手も話合いに応じてくれることがあります。ただ、そのような不利益を説明するのは難しく、不仲であったり疎遠になっている相手に言いづらいことも多いと思われます。そのような場合は、弁護士に依頼をして、弁護士から説明してもらうことも有効です。
(3)連絡を無視され続けたり、対応してくれない場合の相続手続の進め方
相手が連絡を無視し続けたり、全く対応をしてくれない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判所の手続を利用して話し合いを進める方法が考えられます。もし調停でも話し合いが成立しない場合には、遺産分割審判に移行し、裁判所が遺産分割の方法を決定してくれます。遺産分割調停・審判を利用すれば、無視されていても遺産分割について結論を得ることができることがほとんどです。相手がこちらの連絡を無視し続けるようであれば、遺産分割調停に向けて進めていきましょう。
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