破産をしても借金が残る場合(免責不許可)について
破産をしても借金が残る場合があります。
破産手続きをした時に、借金が免除されるには免責許可決定という決定を裁判所が出してくれることが条件となります。
しかし、破産手続きに至る上で、以下の様な事由があった場合には、破産をしても免責許可決定が出ない可能性があります。以下の様な事情を免責不許可事由といいます。
免責不許可事由
1.不当な財団価値減少行為
債権者を害する目的で、財産を隠したり、壊したり、誰かに贈与したり、安く処分した場合です。
破産手続きでは財産を正確に申告する必要があります。そして、一定以上の価値がある財産はお金に換えて債権者に分配されるのが原則です。例えば、本当は持っている預貯金を申告しなかったり、価値がある財産を安く知人や親族に譲ったりすると免責不許可事由に該当します。
2.不当な債務負担行為
破産手続きの開始を遅らせるために、支払ができないことを知りながら、著しく不利益な条件で借金をした場合や、信用取引で商品購入をして著しく不利益な条件で処分した場合も免責不許可事由に該当します。
いわゆる、ヤミ金等の高利業者から借り入れをしたり、クレジットカードで物品を購入して直ちに質入れをした場合等です。
3.不当な偏頗弁済
特定の債権者だけ、期限がまだ来ていないのに優先して先払いをしたり、担保を設定したりした場合も免責不許可事由に該当します。親族や友人を優先したくなる気持ちは分かりますが、破産手続きでは全債権者を平等に扱うことが求められます。
4.浪費や賭博による財産減少、債務負担行為
収入や財産から見て過大な支出をした場合、競馬、パチンコ、FX、先物取引等の賭博行為をした場合も免責不許可事由に該当します。
破産手続きでいう「浪費」とは、破産者の地位、職業、収入及び財産状態に比して通常の程度を超えた支出をすること、とされています。簡単に言えば、身の丈に合わない支出をした場合のことです。多くの方は、この不許可事由に当てはまります。
5.詐術による信用取引
破産手続き開始申立の日の1年前から破産手続き開始決定日までの間に、支払ができないことを知りながら、氏名等や負債額・信用状態等を偽って借入をした場合です。実際の収入より大きな収入を書いて借り入れをした場合等です。
6.帳簿の隠滅、偽造行為
日々の帳簿を偽造したり隠したりした場合です。
7.虚偽の債権者名簿提出行為
一部の債権者をわざと外して債権者名簿を裁判所に出した場合等です。親族、会社、知人等には迷惑かけられないからと債権者から外してしまうと免責不許可となり得ますので注意しましょう。
8.説明義務違反
裁判所や管財人からの調査に対して説明を拒否したり、嘘をついたりし、理由もなく答えなかった場合です。
免責不許可事由に該当しても免責が認められる場合(裁量免責)
以上の事由が免責不許可事由です。
特に多くの方が破産に至る過程で上記4に当たる行為をしています。
しかし、上記1~8の免責不許可事由があっても直ちに免責不許可となるわけではありません。
裁判所の裁量によって免責が許可される「裁量免責」という制度が用意されています。
上記免責不許可事由の程度、期間、反省状況、裁判所や管財人への対応の誠実性といった諸事情が考慮され、結果、免責許可決定が出ることが多いです。
重要なことは、借金をした経緯や財産状況を弁護士に素直に話すことです。
隠し事が事後的に判明すると、上記8の説明義務違反や、1の財産隠しとしてむしろ免責不許可事由が増えて免責不許可となってしまう可能性が上がってしまいます。
事前に免責不許可事由が分かれば、経験ある弁護士は、裁量免責を得るための適切な対応をとることができます。
また、破産手続きをしても免責許可決定を得るのが困難な事案だと思われる場合には、個人再生という別の手続きで対応することも出来ます。
この判断は、弁護士の経験やその地域の裁判所の破産部の判断傾向にも依るので、破産申立の経験が豊富な北九州の弁護士に相談されることをお薦めします。