令和2年4月の財産開示制度の改正について
1.財産開示制度改正の背景
従来、裁判で勝訴判決を取得しても、強制執行をするには相手方の財産を特定して行う必要があり、相手方の財産の調査自体が困難な為、判決をとってそれ以降何も出来ず、逃げ得を許しているともいえる状況がありました。この状況を打開するため、平成15年に相手の財産を開示できる財産開示制度が導入されましたが、同制度に応じなくとも大した不利益もなく実効性がないということで殆ど利用されていませんでした。
この点を問題視し、令和2年4月1日に財産開示制度が強化されることとなり、財産開示に応じなかった場合に刑事罰まで規定されることとなりました。財産開示制度の手続きは、必ずしも簡単ではなく、時間もかかり費用かかること、また把握できる財産に限度がある等、まだまだ十分に利用しやすいとはいえない状況ですが、以前に比べると逃げ得を許さない状況にはなってきていると言えます。
以下、簡単に改正された財産開示制度の概要を見ていきます。
2.改正の内容
(1)罰則の強化
財産開示制度で呼ばれて不出頭、先生拒絶、不陳述、虚偽陳述をした場合は、6ヶ月以下の懲役、又は50万円以下の罰金という刑事罰が科されることになりました。
刑事罰は前科前歴となりますのでこの点の改正は大きいです。先日も財産開示期日に出頭しなかった人が書類送検されてニュースになりました。
(2)第三者からの情報収集制度の創設
ア 不動産に関する情報取得
財産開示手続きを経た後、相手方が登記名義人となっている不動産についての情報開示を登記所に対して求めることができるようになりました。
イ 給料に関する情報取得
養育費の請求権、生命・身体に関する損害賠償請求権に限定されますが、財産開示手続を経た後に、市町村、厚生年金の実施機関が保有している情報から勤務先を知ることが出来ます。債権が限定されるのですが、職場の把握は従来困難だった所に大きな改正となります。
ウ 預貯金債権等に関する情報取得
預貯金や株式等に関する情報の開示を銀行や証券保管振替期間等に対して求めることが出来ます。この手続きは財産記事手続きを経ることなく進めることが可能です。従来、預貯金の差押えには取扱店舗まで特定する必要があったのですが、相手方が預貯金を有する取扱店舗を特定するのは困難でしたが、これによりその調査の手間が省けます。
3.財産開示手続の要件
財産開示手続きをするには、①執行力を有する債務名義の正本を有する金銭債権の債権者であること、②執行開始要件を備えていること、③強制執行の不奏功等、④債務者が3年以内に財産開示手続きに於いて財産を開示した者ではないこと、という要件が必要になります。各要件についての詳細は専門的になるので割愛します。
過去に勝訴判決を得たけれども、相手がお金を払ってくれない、ということで困っていた方々は、この制度を利用することで回収出来る可能性もあるので、お近くの弁護士に相談されてみることをお勧めします。