交通事故と時効(2)~民法改正の影響
令和2年4月1日に民法改正が施行されることになっており、それにより交通事故の損害賠償請求権の消滅時効も大きく変わってきます。
消滅時効は、完成する前に裁判所に訴訟提起をする、相手方から承認の書面を取る等の措置を講じなければ、こちらの請求権が消滅してしまう、という権利自体に非常に大きな影響を与える制度です。
1.短期消滅時効
民法改正により、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の短期消滅時効の期間を5年間(民法724条の2)となります。
その為、人損については交通事故の短期消滅時効が5年に延びることになります。
また、令和2年4月1日より前に起きた事故でも、同時点で消滅時効が完成していないときは5年に延びることになります。通常の債権では債権発生日が令和2年4月1日より前であれば、旧民法が適用されますが、不法行為では被害者保護を優先させる必要があるため、と説明されています。
2.長期消滅時効
不法行為時より20年間経過した場合にも権利が消滅するとされていましたが、民法改正により、この20年間が除斥期間ではなく時効期間であるとされました。
法律的な話になりますが、時効期間とされることで消滅時効の援用(民法145条)を要するほか、中断・停止も生じ、また消滅時効の援用が信義則違反または権利濫用となるケースも出る可能性があります。
時効以外にも、交通事故の賠償に影響する民法改正事項がありますので、民法改正後は、その点を考慮しながら相手方に請求をしていく必要があります。